今日はたまたまネットサーフィンをしていたら見つけた、ちょっと気になるサービスについてご紹介です。
普段、定期・不定期航空運送をやっている会社や航空機使用事業会社のサイトをなにげなく巡回しているのですが
北海道のヘリコプター会社「日本ヘリシス」さんのサイトにふと気になる文字を見つけてサービスを知った次第です。
(出典:日本ヘリシス株式会社)
会員制捜索ヘリサービス?山間部や森林地帯などで遭難した時に使うサービスのようです。
どうやら山岳遭難の多い日本では、今現在とてもホットなサービスに見えますが。会員制と見てめちゃくちゃ会費高いん
だろうなと。お金持ち向けのサービスかな?と思いつつ読み進めていくと
入会金が税別3,000円に、年会費が税別3,650円、ほお。入口のハードルは大分低いようです。
まあヘリコプター捜索の段階になったら、1時間60万とか100万とかの金額が出てくるんだろうなと。その時は思ってたんですが
その下に
ヘリ出動費 「無料」 ※1事案につき、3回まで出動無料
ん?
んんんんん???
え?無料?
怪しい。どこかに高額な請求が発生するのではないか。と思い日本ヘリシスさんのサイトから大元のサービス元となる
「ココヘリ」のサイトまで来て、ようやく仕組みが理解できました。
全国的なサービス提供を提携ヘリ会社と、「捜索のみ」に絞って行うスタイル。救助は行わないことでコストダウンを図っているのでしょう。
それを会費制にして、いわば山岳保険のように加入者が支払うお金でまかなっていくというサービスでした。
日本での山岳遭難、滑落者のニュースは頻繁に報じられていますし、それでも登山者は年々増えている背景を考えると
こういうビジネスが成り立つのかと、ひどく感心しました。
でもこのビジネスってそれぞれのサイトを拝見しましたが「ヘリコプターの性能が許す限りの場所までの捜索」のみに限るって但し書きを入れた方がいいのでは?
軽登山やハイキング、沢登りなどの低空部分では、天候が許す限り効果は抜群にあると思います。しかし本格登山となると
例えば大きな山岳部だと山岳派や乱流が入り乱れているところなどはヘリコプターで近づくのが困難な場所も多々ありますし。
と思ってしまいました。流石に契約書か何かに書いてあるとは思いますが。
ここで今の日本における民間会社のヘリコプターサービスを利用した捜索救難について、少し書いてみたいと思います。
といっても救難よりは険しい場所が多いので捜索メインが多いと思いますが。
まず誰しもが考える捜索救難コスト。
ヘリコプターの飛行1時間は燃費だけでも相当なものです。山岳遭難の捜索ならある程度装備・性能も整った多用途に使える機体をあてがうとして。
仮に、民間の一般的な多用途小型タービン機のB206が捜索に出るとしましょう。
※B206も最近では結構旧式化して国内の登録機数も減っているので、B206L-4とかBK117C-2とかAS350B3とかもしかしたらもっと経費の高い機体かもしれませんが。
この機体の燃料タンクはタービンエンジンに使うジェット燃料満タンで96ガロンぐらいだったはず。
あれ?Useful(使用可能燃料量)が96ガロンだったかどうか定かには覚えてないのですが、大体90ガロンだったとして。
1ガロンは3.7853リットル。3.7853×90=340.677リットル。
燃料費は確か日本国内のJET A-1 で170円~200円/Lぐらいだったかな、130円のところもあったような。
日本国内においては航空機燃料税というものがかかります。リッターあたり26円課税だったのですが平成28年12月に特例措置が閣議決定されて以降、現在は平成31年までリッター18円の航空機燃料税に抑えられています。
航空機燃料税は基本的に燃料の積み込み時に納税義務が発生しますが、どの空港のどの給油会社かによって金額は変動します。
卸元から遠い空港や島の空港なら、それだけ輸送コストが発生しますし。
とりあえず200円に航空機燃料税現行(平成29年7月30日現在)の18円を足して340.3677リットルかけると74,201円。
そこに機体使用料、パイロットと捜索オペレーターの人件費、エンジンオイル代。空港使用料(着陸料等)、運航管理料、諸経費などつけると
プラス20万円から30万円といったところでしょうか。すごく大雑把ですけど。間をとって25万円と仮定して。
B206型で航続可能時間が3時間程度といったところです。燃料代1時間分74,201円。そこに25万円+して
1時間あたり324,201円ぐらいがB206型の運航時間あたりの必要経費だとして、これに税8%かけると350,137円が1時間あたりの目安でしょうか。
これが3時間だとすると、1,050,411円。105万円前後になるでしょうか。もちろん必要経費だけです。
まあ実際はVFR(有視界飛行方式)の予備燃料30分を残すとして
2時間30分といったところでしょうか。現場までの空輸時間を往復30分と差し引いて、燃費の悪い低高度。ホバリングも何回か行ったとして、1回の捜索あたり1時間半程度が作業にあてられる時間になるでしょうか。
さらに言えば、場所によってはまず現場近くの空港・ヘリポート・場外飛行場まで機体を空輸しないと作業が出来ませんので空輸料が発生します。
拠点となるヘリポートや空港から捜索対象の山岳地域が遠くなればそれだけ捜索可能時間が少なくなります。
これに会社別の利益をのっけて1回3時間の捜索で100数十万ぐらいはかかるのではないでしょうか?
このあたりが山岳遭難で民間ヘリコプターを使うと、1日の捜索で何百万円と高額な費用がかかる根拠の部分だと思います。
今ではスポーツレジャー保険の「登山保険」が単発で結構販売されています。1泊2日で600円とか。
それでも捜索救難費用の補償額は300万円程度。3日以上見つからず、民間ヘリにもお願いすると、多分2日の捜索救難で足が出る計算ですが
入っておいた方が身のためと考えれば、はるかに安いものです。
警察や消防、自衛隊のヘリコプターはもっと大きな高性能ヘリコプターが捜索救難のメインになります。
国の機関が捜索救難に出ると捜索救難費がほとんど遭難者に請求されないとはいえ、
救助ホイストなどの救難装備も完備しているその1時間の運航経費たるや300万軽く超えるとか。
その点を踏まえて今回のサービスを見てみますと。最大捜索可能距離は5キロ。でもその距離まで要救助者に近づければ、冒頭のムービーにもあるようにレシーバーに機体と救助者との距離と方角が表示される訳です。
つまり登山届が出ていないと、捜索エリアが相当広がるので難しい状況になるかもしれません。なので必ず登山届を提出するのは必須でしょう。無いよりははるかに上等です。見つかればピンポイントに来てくれる上に、捜索隊に座標データを送信してもらえるのですから。
ヘリが近づけない場所でなければ、それこそ尾瀬のハイキングや伊豆箱根の軽登山では絶大な威力を発揮しそう。
私は以前、岐阜の八重山付近にお仕事で作業着を着ながら登って汗だくになりながら下山したことがありました。
はじめてお仕事で登った山でした。
2時間歩いて昇るだけの仕事だとたかをくくっていました。
山の上のお仕事場には、経路上に先に上がった業者さんがつけてくれたピンク色のガイドテープ(はちまきみたいなもの)が木にくくりつけてあって。それを辿って昇っていくだけだったのですが。
1時間昇っただけで次のガイドテープと先行していた先輩を見失い、後ろを振り返ると急斜面。左の方からはキジだかなんだかのクケーッという叫び声。
「あれ、ちっこい山だと思ってたけど、ここで滑ったら遭難する可能性あるんじゃね?」と思ったところで先輩に「早く来ないと置いてくぞ~」声を掛けてもらいからくもお仕事を継続することが出来たちょっと怖い経験があります。(笑)
とっても頼れる素敵な先輩でした。本当に先輩にたくさんのことを教えて頂かなければ、今頃ろくに社有車も運転できなかったと思います。
ブースターケーブルをなんで山に持っていくんだろうと不思議に思っていたら、路肩にバッテリーの切れた車が止まっているのを見て「ああ、こういう時に必要なのね」と山の近くで仕事をするんだという実感が沸いた覚えがあります。
昇る前に事務所のクマ撃退スプレー持っていくから~と言っていた先輩。そんな素晴らしいものがあるのかと感心していました。
下山して事務所に戻ると、クマ撃退スプレーがそのまま置いてありました。とっても泣きたくなりました。
出張から帰った後に、こっそり鈴とスプレーとポイズンリムーバーとヒル避けと、コンパスにと、もうありとあらゆるものを好日山荘とモンベルで買い揃えました。自費で。経費とかどうでもいいです。とにかく自分の身は自分で守るものと学んだのです。人に頼り切ってはいけない。反省点です。
まあすぐに転勤になってしまいましたが。
このサービスがあの時にあれば、私は間違いなく年会費をお支払いしていたでしょう。クマ撃退スプレーとともに。
話しを戻します。
1事案につき、3回までの捜索ヘリ代は無料とあります。そして捜索ヘリ到着まで2時間以内と記載してあります。
救助を伴わない捜索のみ。かつ会員に貸し出したビーコンで効率的に遭難者の元へ飛んでくる。
捜索のみですむのであれば、もし仮に低地の山岳とか樹海のような場所なら、航続距離の短く、運航経費の安い2人乗りのピストンヘリコプターロビンソンR22でもサービスに提供可能ですね。
確かチャーター1時間で25万円前後ぐらいのはず。
ここで「ココヘリ」を提供している会社の取引先を見てみると
前述した日本ヘリシスさんと、北陸の航空機使用事業を営んでいるヘリコプター会社のアドバンスドエアーさんが書いてありました。
どちらの会社もロビンソンR44の運航がメインですので、多分来るとしたらこの機体なのでしょう。
そのほかの地域についての提携ヘリ会社さんも気になりますが。
さてさて、ここまで気になった航空サービスについて紹介してきました。
今日はここまで。