今日の昼のニュースを見ていたら「パイロット養成の新しい奨学金」が来年度平成30年から新たに創設されるとのこと。
ほうほう。
対象は多分パイロット養成をしている大学や指定養成施設向けなんだろうなぁと思いつつ、内容を見てみました。
国土交通省で発表された報道資料は下記の通り。
「私立大学等における無利子貸与型奨学金「未来のパイロット」の創設~パイロットを目指す学生の裾野が広がります~」
来年度開始予定ということですが、対象は6機関の1学年あたり25名まで。
なるほろなるほろ。
今までにも貸与型奨学金制度を備えている学校さんはありましたが、そこに加えてということですね。
もしすべての奨学金が適用される学生さんは貸与型とはいえ、今まで借金や何かでまかなってきた学生さんから見ると
無利子になる分は大きい分。費用軽減効果は大きそうですね。ただやはり、貸与型なのですね。
対象となる養成機関は下記の通りです。
以前から叫ばれているパイロット不足、2020年問題。
新しい施策をようやく国がからみつつ始まりつつある状況は、もしかしたらパイロット養成激動の時代を迎えそうな予感です。
ここで1つ、気になるのが。
以前から国の専門実践教育訓練給付金について。何故フライトスクールや専門学校はこの制度を活用しないのかという個人的な疑問です。
この制度を利用して下さるフライトスクールか専門学校があったらどんなに頼もしいことかと
以前、当ブログ記事で紹介したことがありました。実はこの専門実践教育訓練給付金制度について、平成30年1月から更に拡充されることになったのです。
政府が進める働き方改革の一環として、目玉施策のうちの1つでもある訳なのですが、行政縦割り社会のせいかなかなか他の有効な育成・奨学金制度との結びつきが弱いように感じます。2つとも使えるようになればどれだけ技術を持った専門技能者が育つ可能性が上がることかと思います。
詳細は厚生労働省のこちらのページから。
「平成30年1月から専門実践教育訓練給付金が拡充されます」リーフレット
奨学金は貸与型返済ですが、こちらは純粋に教育訓練に対する給付金として給付される制度なので、まさに働きながら上を目指す人のための制度でしょう。
この講座の中にある航空関係の講座といえば、
専門実践給付制度指定対象講座一覧【全体版】にある関東職業能力開発大学校附属千葉職業能力開発短期大学校成田校の
航空運航整備士の講座があるのみです。
こちらの専門実践教育訓練の対象となる講座のリーフレットには業務独占資格にはしっかりと「航空機操縦士」とも記載があるのです。
パイロット養成に国が本腰を入れるのであれば、この制度は非常に効果のある制度だと思うのですが
悲しいかな記載があるにも関わらず、教育訓練給付の対象となる講座申請をしているフライトスクールや専門学校はゼロ。
国の広報ご担当に周知活動をもっと頑張って頂きたいのですが。
きっとどこかのご担当者様がこのブログをたまたまご覧いただいていて、講座周知や申請に興味を示していただけないものかとの思いから今回の投稿にてご紹介しております。
この制度の良いところは定められた期間、雇用保険被保険者として働いていれば(初回は2年間以上)、専門のキャリアコンサルタントからキャリアコンサルティングを受けなければいけない、その後は申請がいくつかと手続きはありますが
制限はあるものの、教育訓練費の50%または年間上限額(1年間:40万円まで、2年間:80万円まで、3年間:120万円まで)まで給付金が出るという制度です。さらにその教育訓練で資格を取得して1年以内に就職すれば、上記それぞれの年間上限額の場合はさらに20%追加で給付金が出るという制度です。
また、専門実践教育訓練給付金と合わせて活用できるのが「教育訓練支援給付金」です。
教育訓練のために離職した45歳未満の離職者のうち、一定の要件を満たす方が対象となる「教育訓練支援給付金」の支給額は基本手当日額に相当する額の80%となるということです。
以前は「教育訓練支援給付金の支給対象者は初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する方で、受講開始時に45歳未満など一定の要件を満たす方が、訓練期間中、失業状態にある場合に支給」とあり
この支給額が、
当該訓練受講中の基本手当の支給が受けられない期間について、基本手当の日額と同様に計算して得た額に50%の割合を乗じて得た額に、2か月ごとに失業の認定を受けた日数を乗じて得た額を支給します。
とありました。
これの50%が80%に拡充される訳です。
これは非常に大きい拡充だと思っています。
例えば、自家用または事業用操縦士のように専門教育を集中的に行う必要があり、かつ高額な訓練費がかかる訓練において
仕事をしながらの取得を目指すには資金的、就職を目指すなら年齢的にも限界があります。
今現在働いていても、本気でエアライン目指される方はお仕事を退職されてフライトスクール等への入校を決意される方もいらっしゃると思います。
ご家族の中だけで資金繰りが出来ない方は、今まで働いて貯めた貴重な貯金と教育ローンにすがるしかありません。
教育ローンであれば最低限、訓練中は利息の分だけ支払いが必要で、元金の返済は訓練後に始まります。
訓練を始めている時にとても気になるのは、訓練費ばかりに目が行きがちですが、訓練期間中の生活費や未就労期間中の法定強制保険である国民健康保険の保険料納付、国民年金への納付。その他今までに加入していた医療、生命保険など、たくさんの支払いに追われると思います。
国民年金であれば学生納付特例制度で払い込み免除制度があったと思うのですが、フライトスクールってどういう扱いなんでしょうか?これは分かりませんでした。
とはいえ、これに教育ローンの利息分の支払いや家賃光熱費通信費の支払いも加われば、相当な額となります。
専門実践教育訓練給付金の最大のメリットは、「教育訓練支援給付金」も受けられるので生活費をまかなえる可能性があるということです。
教育訓練給付金は原則として、離職する直前の6か月間に支払われた賃金額から基本手当(失業給付)の日額を算出し、その80%相当額を日額で支給されます。
離職前6か月に20万円の賃金を受け取っていた方なら日額6600円、基本手当とはこの日額の45%~80%(対象者の条件により変動)を指しますので、最低の45%だとすると2999円。2999円×30日=月額89970円。が教育訓練給付金として受けられる可能性があります。
固定翼事業用操縦士だけの資格取得を目指す訓練にいたっては、昨今のフライトスクール津々浦々の資料請求やホームページの開示情報だけでも500万から800万近く掛かります。
アメリカFAAの事業用操縦士や計器飛行証明を取得していて、日本の事業用や計器飛行証明の訓練を受ける場合は一部科目が申請を行えば免除されるので日本国内における訓練費の幅は持っているアメリカFAA資格によって変動します。
いずれもBIF(基本計器飛行)とAirwork(空中操作)の一部科目が免除になると定められています。
飛行訓練費が高い日本の現状からすればある程度費用軽減効果があるかもしれませんが、まあFAAの資格を取得しなければならない分の費用も掛かってくるのでFAAの方の訓練時間が想定よりも掛かってしまえば国内一貫の方が安く上がる可能性も無きにしもあらずなのですが。
そこへ日本国内のエアラインへ就職を目指すとなると、日本の多発計器飛行証明が必要となってきますので(一部は単発計器だけという会社もありますが)G58バロンやダイヤモンドDA42、パイパーセネカなどの多発機1時間あたりの飛行訓練は13万円~16万円程度。
50時間から60時間の多発計器飛行訓練が必要となると、650万~780万または800万~960万。
国内事業用に500万~800万。
国内多発計器に650万~780万または800万~960万。
足が出るのを見越しても、800万+960万=1760万円。
2年間の食費生活費家賃支払い等々で月額10万円として、240万円。
トータルで多めに見ても2000万円。
このうち、生活費等の経費が教育訓練支援給付金でまかなえたとすれば、訓練生は訓練費の金策だけに没頭することができます。
今回新しく発表されたパイロットの奨学金も、訓練費用を賄う面ではとても良いと思います。
ですがやはり、訓練中の生活基盤がしっかりしていることは精神的にも安定した環境で訓練にしっかり打ち込むことが出来る環境づくりに寄与します。
専門実践教育訓練給付と教育訓練支援給付金はとても有効な制度だと思うのですが。
訓練生的には純粋な給付金での訓練費軽減と飛行訓練へ入るためのチャンスが広がること、フライトスクールや専門学校にとっては講座申請の手続きは必要ですが、生徒が増える可能性のある制度。
中長期的なパイロットの大量養成が必要な時代のニーズからすれば、さらにパイロットを増やすための施策として有効だとも思います。
来年からまた給付が拡充されるのですから、是非この機会に活用していただいて、パイロットになるための門戸をさらに広げていただけないものかと、不肖ながら願って止まない次第での投稿でございました。
長文かつ私見が過ぎましたが、ブログなのでこういう投稿もありかなと、意見具申的な投稿でございました。
さてさて、本日はここまで。