サイトアイコン サラリーマンからパイロット目指して

事前に用意出来るものから

東日本大震災の混乱はありましたが、なんとか転職先に入社することが出来ました。
以前の営業とは違い総務採用のため、電話応対以外は0から覚えることがたくさんありました。午前中は入社教育。そして午後は各部署への挨拶周りがありました。ここで生まれて初めて東京ヘリポートへ足を踏み入れました。念願だった運航・整備の実務部署への挨拶は感動しきりだった覚えがあります。パイロットや整備士の方々に挨拶して周り、格納庫の見学で機体を間近に見ることが出来ました。この日は出会う人達や、見るもの全てが夢物語だと思って諦めていた航空関係会社で今日から自分は働いていけるのだと強く実感したものです。

 

働き始めてからは自分の仕事に慣れることを最優先に、合間に色々な人たちの経験談を聞くことが出来ました。総務は書類管理や応対、健康診断や会社関係の行事、労務人事系の業務が中心だったため、会社員として知っておくべき知識や関連法規について詳しく知ることが出来ました。違う会社に転職するということはまったく違う新しい知識に接する機会でもあるのだなと思った記憶があります。

そして本来の目的、飛行訓練に関係する準備として手始めに無線の資格を取ることを決めました。

日本で航空機を操縦する場合、必ず必要な最低限の無線資格として「航空特殊無線技士」、そしてその上級資格として事業用のパイロットや管制官に運航情報官、整備士や運航管理者(ディスパッチャー)が職務上持つ必要のある「航空無線通信士」という資格があります。いずれも航空無線の国家資格です。合格すれば持ち続けることが出来る国家資格なので早速取得を目指して勉強し始めました。

無線に触れたことはありませんが、飛行訓練はすぐには始められそうにありません。なので事前に用意出来るものから手をつけていこうという算段でした。

普通の経済学部出身の自分にとってはこれが結構大変でした。勉強方法は主に過去問を購入してテキストと併用しつつ覚えていく形なのですが「フレミングの法則」ならまだしも、「電界効果トランジスタ」「P型半導体」「MOSチャネル」「ゲート、ソース、ドレイン」などなど人生で出会った事の無い単語のオンパレードで半べそ状態でした。
テキスト開きながら寝落ちした経験もこの時が最初ですね(笑)

 

例題としてよく出てたのが「同軸ケーブルにI(A)の直流電流を流したとき、内部導体の中心からr(m)離れた点Pにおける磁界の強さHを表す式として、最も近い物を選ぶ。ただしrは外部胴体の外径に比較して極めて大きいものとする」とか「下記に示す周波数変調方式(F3E)について、空欄を埋めなさい」とか。空欄補充方式は変調方式の並びを覚えるだけなので対応は出来たのですが、パルス符号変調(PCM)方式の問題やNPN形トランジスタとPNP型トランジスタとの違い比較問題なんか苦手すぎて意味不明でした。カルチャーショックとでも言ってもいいくらいに意味不明な言葉しか乗ってないんです。テキストで解説されていても、そもそもその解説に出てくる記号がなんのことか分かりません。
ただやはり電波の見通し距離など、知らないと実運航をする上の知識として必要になりますのでちゃんと理解していないといけません。電波の波長とアンテナ長の計算で「λ」が出てきました。読み方が分からずインターネットで検索して読み方は判明したのですがそもそもインターネットで検索する時になんて打ち込めばこんな単語が出てくるの!?なんて困ったことがありました(笑)

そして悟ったのです。独学の限界があることを。
「これは、まずいぞ。こんな内容をパイロットはみんな知って資格取って飛んでるのか?嘘だろ」

非常に危機感を覚えた記憶があります。パイロットになるとかそういう話しでは無く、それ以前の問題なのですから。
パイロットと管制官の交信で必ず必要になります。そして検索を繰り返していると、パイロットになる方法を調べていた時によく目にしていた「イカロス出版」のサイトが出てきました。

「イカロス・アカデミー 航空特殊無線技士養成講習会?・・・3日間の講習と修了試験合格で資格取得!!」

すぐさま申し込みをして、受講しました。私のように工学知識0の方が受講するには事前にテキスト購入をしてある程度予習をしておくのは必須だと思いました。1か月前から始めれば大丈夫だろうとテキストに向かいましたが、知らない単語を調べて読めるようにしておいたり、無線法規は暗記がメインなので何度かテキストを読み返しながら、分からないところを調べて理解。また繰り返し読み返すといった方法で予習を進めていきましたが、受講日前に思うともう少し予習しておけば良かったと市ヶ谷で後悔した覚えがあります。3か月前とかなら十分ですかね?
電気通信術なんかはフォネティックコードというものを覚えて、書き取れるようにするだけなので簡単です。
いわゆる呼び間違えが無いようにABC「エー、ビー、シー」ではなくABC「アルファ、ブラボー、チャーリー」と呼んでいく方法のことです。26アルファベット全てに呼び方が定められています。いわゆるラテン文字の欧文通話表ですね。

◆フォネティックコード読み方◆

A アルファ
B ブラボー
C チャーリー
D デルタ
E エコー
F フォックストロット
G ゴルフ
H ホテル
I インディア
J ジュリエット
K キロ
L リマ
M マイク
N ノベンバー
O オスカー
P パパ
Q ケベック
R ロメオ
S シエラ
T タンゴ
U ユニフォーム
V ビクター
W ウイスキー
X エクスレイ
Y ヤンキー
Z ズールー

あと数字の読み方も普通ではありません。特に3と5と9ですね。(個人的にはアメリカで0の発音は相当違ったけど)

1 One (ワン)
2 Two (ツー)
3 ThreeじゃなくてTree(スリーではなく、ツリー)
4 Four (フォー)
5 FiveじゃなくてFife (ファイブじゃなくて、ファイフ)
6 Six (シックス)
7 Seven (セブン)
8 Eight (エイト)
9 NineじゃなくてNiner (ナインじゃなくて、ナイナー)
0 Zero (ジーロ)

これらは国際民間航空条約にもとづいて決められていて、日本での所管は総務省になります。そもそも航空特殊無線技士、航空無線通信士と名前はついていますが、電波法にもとづく資格となります。それと00や000、無線の周波数を伝える時に必須の小数点の呼び方も下記のように決められています。

数字の桁が3桁~5桁までの読み方(ただしATCトランスポンダーのスコークや高度計規正値の読み上げには数字4桁を1つずつ読み上げます)

例)900=ナイナーハンドレッド、9000=ナイナータウザンド
2500=ツータウザンドファイフハンドレッド
12500=ワンツータウザンドファイフハンドレッド
小数点「.」=ディシマルまたはポイント

自機の位置をレーダーに表示させるためのアビオニクスをATCトランスポンダーと言います。また高度計規正値(アルティメータ)というものは、高度計が常に正しく規正された高度を指し示すための数字です。コンタクトしてきた機体に管制機関が伝える最新の観測値を数字4桁で伝えてきます。下記は横田基地の管制官との交信例です。

自機:Yokota Approach,JA0000.Good morning.
(横田アプローチ、ジュリエットアルファ0000です。おはようございます)

横田APP:JA0000,Yokota Approach.Good morning.Squawk 5455(Fife-Four-Fife-Fife),Yokota Altimeter 2992(Two-Niner-Niner-Two),Ident.
(ジュリエットアルファ0000、横田アプローチです。おはようございます。スコーク5455、横田基地のアルティメーターは2992です。アイデントしてください)

自機:Roger,Squawk 5455,Altimeter 2992 and Ident.JA0000.
(ラジャー、スコーク5455。アルティメータを2992にセットしてアイデントします。ジュリエットアルファ0000)

横田APP:JA0000,Rader contact.3NM South West of Chofu.Altitude readout 2500.Say your Intention.
(ジュリエットアルファ0000、レーダーコンタクトしました。貴機は調布飛行場の3マイル南西、レーダーによる読み取り高度2500フォートを飛行しています。このあとどうされますか?)

以上のように高度とトランスポンダー・アルティメータの数字は読み方が変わります。使い続けていれば自然と馴染んできますので、多分そのうちきっと違和感は無くなるだろうと思いますが(笑)
そんな訳で入社4か月で航空特殊無線技士を養成会で取得、入社2年目で航空無線通信士を取得しました。仕事と勉強の両立はとても大変です。だからこそ適度に休み、好きなことをして目標に対するモチベーションを持ち続けていくことが非常に大切だと自分は感じていました。それも持ち続けなければいけないと考え続けると気持ちが疲弊してしまうので、自然にモチベーションを維持できるような環境にあるのが一番良い成長環境だと思います。

次はいよいよフライトスクールの情報や各飛行場、空港への下見について投稿していきたいと思います。

 

 

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