今日は動画を整理していたら、カリフォルニア訓練当時の動画でSteep Turns(45度急旋回)の動画が見つかったので紹介したいと思います。
これは以前の投稿「AirworkとAirman Certificate Standards」でも紹介したFAA自家用操縦士実技試験の必須科目のうちの1つなのですが、自家用の課目のうちで一番体にGがかかる飛行方法になります。
それもそのはず通常ゆるい旋回(Shallow Bank)でも5度から10度、通常旋回でも15度、20度というところですが、この旋回は45度のバンクを入れながら、高度を下げずに旋回し続けてぐるっと360度旋回して元の場所に戻ってくるという課目です。
そのため戻ってくるまでは高度が下がらないように操縦桿は引きっぱなしです。バンクを入れて操縦桿を引くだけでは旋回は維持できなかったりします。
飛行機が水平直線飛行をしている状態を大本のスタート地点として見てみましょう。
飛行機が水平直線飛行している時、翼は上向きの揚力を生み出して重力による機体の重量を支えてバランスを取って飛行しています。飛行機の上に↑上向きの矢印を書いたら、今度は↓下向きの矢印を書き、揚力と重力が釣り合っている状態なので、2つの矢印の長さで力を表現するなら同じ長さで表現できるはずですね。下の図の左側の状態です。
(出典元:アメリカ連邦航空局 Airplane Flying Handbook )
では翼を傾けたら?矢印は傾きます。上向きの揚力が発生している矢印が傾き、下向きに発生していた重力の矢印も傾きます。唯一機体を支えていた揚力の矢印が傾いたなら!ちょうど上の図の右側の状態ですね。
このとき高度、下がりますね。機体を支えていた元の力を傾きによって失ってしまったのですから。その減った揚力分はどこへ行ったかというと、青い矢印のTotal Liftの方向なんですが。ちょっと言葉が硬いし分かりづらいので何か例え話を入れて表現してみましょう。。。
機体が傾いた方へ揚力を発生させてるわけですから。さながらグイグイと幼い子供が母親に「あれ買って!!あれ買って!!」と超合金のプラモデル、はたまたリカちゃん人形を置いているおもちゃ屋の方向へねだるようにグイグイと機体を傾いた方向へ引っ張っていきます。
お母さんは困りました、今月の出費(残りの燃料)を考えたら財布のお金(高度)を減らすわけにはいきません!!
このままでは高度が落ちる!(お金が減る!)ので減った揚力分を何かで補てんしなければいけません!
それには2つの方法があります。
1 操縦桿を手前に引いて昇降舵(エレベーター)を上げ舵にする。つまり機首を上げると角度を上げた分、向かえ角が大きくなり揚力が生まれます。
(お子さんの手を引いて「昨日も買ったんだからダメ!こっち来なさい!」とおもちゃ屋から家の方向へ引き離す)
2 エンジンにパワーを入れて、減った揚力分を得るためにスピードアップしてさらなる揚力を発生させる。
(お父さんに喝を入れて、お父さんに稼ぎを増やさせるか、お父さんのヘソクリを放出させて臨時の生活費を発生させる)
となります笑
そうすれば高度(お金)は元の値からは減りません。
ただ1の操縦桿を手前に引いて昇降舵(エレベーター)を上げ舵にする。はそのままだと速度が減速してしまいます。速度を減らしたくなければ適度にパワーを足してあげなければいけません。
また、旋回をする時に同時に発生する現象があります。その現象は機首を旋回方向と逆の方向に向けさせる力が発生してしまうことなのですが、これにはラダーで対処してあげなければいけません。
なぜそんな力が生まれるのかというと、例えば左に旋回しようとすると左翼のエルロン(補助翼)が上がって左翼の揚力を減らして翼を下げます。反対に右翼のエルロン(補助翼)は下がり、右翼の揚力を増大させます。ちなみに揚力が増えた方のエルロンには抵抗が増大します。下の図の青く書かれている「Additonal induced drag」の部分ですね。この現象は揚力が減った側の翼では抵抗が減少します。
(出典元:アメリカ連邦航空局 Airplane Flying Handbook )
左翼の抵抗は小さくて、右翼の抵抗が大きいということは。。。機首が旋回方向とは逆の抵抗側へ振られてしまう状況です。
例えば井の頭公園でボートを借りて、オールを漕いでいる時、左のオールはほぼ水平にして、右のオールはガバッと70度ぐらいに立てるとどうなるでしょう。ボートは右のオールの抵抗につられて舳(へさき)を右に向けますね。これと同じ現象が飛行機に起きています。
つまり状況を整理すると、左に旋回するためにバンクを入れたら、なんか右翼のエルロンに抵抗が発生して機首が右に引っ張られている!!という状況。これをAdverse Yawと言います。直訳すると「不利な回転」ですかね?なのでその不利な回転を打ち消すために、飛行機が旋回する時は必ず旋回方向にラダーを踏み込んで効果を打ち消します。Adverse Yawを打ち消すのです。
つまり、旋回するにはエルロン(補助翼)でバンク角を、エレベーター(昇降舵)で揚力を、ラダーでAdverse Yawをコントロールすることで定常旋回や急旋回を行うことがはじめて出来るようになります。この3舵の調整をバランスよく使うわけです。
ということで今日はここまでにしようと思います。
明日こそはFlight Computer(航法計算盤)Part4を投稿したいと思います。