大分ご無沙汰の航法系の投稿です。今年はFAA自家用取得を目指しておりますが、その後の切り替えに向けて先に3月のJCAB自家用学科試験を受けてしまうこと。英語力向上に向けて、同じく3月のTOEIC受験で自分のスコア見極めを行うことを追加の行動目標としたため、少々バタバタになってしまっております。
時事的話題としては先日、アメリカ合衆国新大統領としてトランプ氏が就任されました。なにやら色々とやりたいことがおありのようですが、個人的にはビザ制度の見直しについて大変気にかかっております。どこまで手をいれられるか分かりませんが、用心に越したことはありません。ともすれば飛行訓練のための渡米に影響することも十分考えられると思われますが、今後の動向を注視していきたいと思います。
さてさて、本日は航法定規(Navigation Plotter)と航空図(Aeronautical Chart)について投稿したいと思います。
これは航法に必ず必要になるツールとなります。次回訓練では野外飛行、いわゆるクロスカントリー飛行を行う予定なので予習復習のために使い方のご紹介です。
ではまずどんな物かというと。まずは航空図の地域ごとに区切られたもの、Sectional Chart(区分航空図)のグアムが載っているものを使っています。これはグアムが属している北マリアナ諸島群やソロモン諸島、裏面にはハワイの航空図が掲載されているものとなります。
この他にもTAC(Terminal Area Chart)やWAC(World Aeronautical Chart=国際航空図)などがあります。
FAAのCheckrideの時は最新のものを携帯することが必要ですが、このChartは約6か月ごとに更新されます。なので買い直す必要があります。一目でほとんどの情報が見えるように作られていて、空域・空港や飛行場・航空路・無線航法施設・地形などの他にも道路や障害物、山の標高や人口密集地について様々な情報が集約され、新しいものが発行されるごとに更新されていきます。
という訳で、はいこれ。
これだけでは全貌が分からないので、広げてみましょう。
でや!
折りたたまれているものを展張してみると1メートルぐらいの長さになります。
部屋が狭いので広げるスペースが限られています。椅子のコロコロとかドアの端とかベッドが見えるのはご容赦ください笑
最初の写真で紹介した裏面には、それぞれの記号の意味が一覧で載っています。
このように。
ここら辺の記号は、また後日の投稿で詳しく紹介してみたいと思います。
ではまずは訓練地、グアムの周辺をクローズアップしてみましょう。
ということではい。
いやあ。書き込みは気にしないでください笑
チャートは色々書き込んでいくうちに色々な情報を分かりやすく見たくて、Towerの周波数をでかでかと書いたり、制限空域は赤で目立つように書き込んだりしています。またグアムの南端にある訓練空域、Practice Area Alpha とPractice Area Bravoは指定されている上限高度が違います。なので書き込みを入れて間違えないようにしています。
WARNING W-517や赤字で書き込まれた「TFR=Temporary Flight Ristrictions」は飛んではいけない空域です。軍用機のための演習場や国家安全保障に関わる地域などが指定されています。
よく見ると空域の情報の他に、緯度線と経度線の子午線が書き込まれているのが見えます。今回はこの線を使ってグアムからロタやサイパン、テニアンへの距離と方位を測りたいと思います。
ここで取り出したりますは航法定規(Navigation Plotter)です。自分が使っているのは分度器のような部分が固定されていますが、ここが回転するものも売られていたりもします。使い勝手の良い方を選んで皆さん買っているようですね。
というわけで、はいこれ。
この定規は直線部分で距離を、分度器のような部分で方位を測るのが主な使用方法となります。
ではまず、距離の目盛りを知りたいので
直線部分の左端にフォーカスして見てみましょう。
はいこれ。上段、中段、下段にそれぞれのチャートに使う目盛りが書き込まれていますが、今回はSectional Chartなので一番上の50万分の1対応目盛りのNAUTICALを使います。
距離を測るのは普通の定規と変わりありません。
出発空港に0をおき、目的空港まで定規をおいた時の目盛りを読み取るだけです。
ちなみにグアムからロタはというと
48.5Nautical Milesですね。
まあ四捨五入でハーフマイルほど多めに見積もって49NMと見た方が航法的には安心ですかね。
次にこのまま方位を測ります。
今おいているプロッターの真ん中に点があるのが分かりますでしょうか?黄色のひし形で囲った部分です。
ここの中心点を経度線のとこまでずらすと、分度器のところで方位が分かります。
ただしずらし方に注意が必要です。グアムとロタを航法定規で今まさに直線を結んでいる状態ですが、この線の上を外さないように、一番近くにある経度線までスライドさせないといけません。下の図で引いた黄色の線はグアムとロタを結んだものです。
この線上を外れないように、一番近くの経度線「東経145度」の線までプロッターをずらします。中心点を経度線にあわせたときに、分度器の目盛りを読むとグアムからロタへ行くときの角度と、ロタからグアムに向かう時の角度、この2つを読み取ることが出来ます。
移動した後に分度器の目盛りを読み取ると
こうなります。青い線が東経145度線ですが、32度と212度が大体重なります。
なのでグアムからロタへ行く時は空港から方位32度方向に48.5NMロタが、ロタから212度でグアムがあるということが分かります。
距離と方位の出し方はこれで終了なのですが、実際に飛ぶとなると更なる計算を加えなければこの数字は使えません。
以前の投稿でVariation(偏差)について紹介していますがこの数字を確認します。
Variationの計算の仕方は、E(東)なら引き算、W(西)なら足し算でした。(Flight Computer(航法計算盤)Part5 と ちょっとNavigation(航法)のページ中段以降を参照)
グアムでは「1°E」がVariationですから、32度から1度マイナスします。すると磁方位として31度が出てきます。
さらに機体の自差(Deviation)がありますので、機体の磁気の影響を受け続けている機体搭載用コンパスが、指し示した角度から影響を受ける分の数字をを加減しなければなりません。
すると初めてそれぞれの空港を目指す時のコンパス・ヘディング(磁針路)が出ます。おおむね30度と210度ですね。
一応確認のために、Sky vectorを使ってグアム国際空港とロタ空港を結んでみましょう。
まずはグアムからロタまで。おっと!途中TFRの空域を通るので迂回しなければなりません。少し距離が延びますね。
次にロタからグアムまで
と、同じ数字が出ました。
ここでお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、FAAのクロスカントリーは1レグ(ある地点からある地点まで)の距離に規定が定められています。FARのPart61によると
「At least astraight-line distance of more than 50 nautical miles from the original point of departure」
(少なくとも直線距離で50マイル以上、出発地から離れていること)
おおっと、これでは1マイルがクロスカントリーに足りないではないかと。
いえいえご安心ください。
FARの中には離島を拠点としたパイロット向けのクロスカントリーについて特例を定めた法律があります。
§ 61.111 Cross-country flights: Pilots based on small islands.
(a) Except as provided in paragraph (b) of this section, an applicant located on an island from which the cross-country flight training required in § 61.109 of this part cannot be accomplished without flying over water for more than 10 nautical miles from the nearest shoreline need not comply with the requirements of that section.
(b) If other airports that permit civil operations are available to which a flight may be made without flying over water for more than 10 nautical miles from the nearest shoreline, the applicant must show completion of two round-trip solo flights between those two airports that are farthest apart, including a landing at each airport on both flights.
(c) An applicant who complies with paragraph (a) or paragraph (b) of this section, and meets all requirements for the issuance of a private pilot certificate, except the cross-country training requirements of § 61.109 of this part, will be issued a pilot certificate with an endorsement containing the following limitation, “Passenger carrying prohibited on flights more than 10 nautical miles from (the appropriate island).” The limitation may be subsequently amended to include another island if the applicant complies with the requirements of paragraph (b) of this section for another island.
(d) Upon meeting the cross-country training requirements of § 61.109 of this part, the applicant may have the limitation in paragraph (c) of this section removed.
概要としてはこんな感じですね。
離島を拠点としたパイロットで自家用操縦士の訓練生は島のもっとも近い海岸線から10マイル以上洋上飛行をしなければ他の民間運用されている空港にいけない場合はクロスカントリーに求められる要件を満たさなくてもよい。かわりに2空港間を2回単独往復する能力を示さなければならず、それぞれ両方の空港でのランディングを含むこと。
またその場合には次のリミテーション(制限)をつける「適切な島から10マイル以上離れる飛行では乗客の搭乗は禁止」
※受験者がパラグラフbに従って別の島としたなら、そちらの島に修正される
セクション61の109の要件のクロスカントリー訓練を行った場合は、受験者のリミテーションは解除される
となります。FAAでのクロスカントリーは問題なくグアムでも出来ることが分かりました。
ただしここで日本人として日本の自家用免許に切り替える場合はどうなるのか。日本の野外飛行の規定には1レグあたりの距離規定がありませんので50NMなくても大丈夫です。
かわりにグアムーテニアンーサイパン-グアムと途中2回の生地着陸は必ず必要となります。また270㎞以上の総距離を飛ばなければなりません。
グアムからサイパンまでは112マイルほど、サイパンからテニアンまでは10マイルほど、テニアンからグアムまでは102マイルほどとなりますので、合計で224マイルほどですね。
1NMは1.852㎞です。224×1.852=414.848㎞ですね。270㎞などとうに超えていますのえ、日本の自家用操縦士に求められる野外飛行の要件も満たしているということになります。
この点について、根拠を調べてみました。
国土交通省航空局通達の国空乗390号「航空機乗組員飛行日誌記入要領」によれば
(12) 野外飛行(CROSS COUNTRY FLIGHT)
9、10又は11項において野外飛行を実施した場合の飛行時間を記入すること。
野外飛行の解釈は空乗第2129号(平成6年11月16日付)「野外飛行の解釈及び運用
について」のとおりである。
とあります。
この空乗第2129号には
1. 事業用操縦士の項及び自家用操縦士の項における各第1号ロ、第2号イ(二)、第3号ロ及ぴ第4号ロについて
(1)「出発地点から○○○キロメートル以上の野外飛行で、中間において○○○回以上の生地着陸をするもの」の解釈及び運用は、次回の例に示すように、出発地点から生地着陸地点を経由して最終目的地にいたるか又は元の出発地点に戻るまでの総飛行距離が規定されたキロ数以上の飛行で、かつ、当該飛行の中間において規定された回数以上の地点で生地着陸を行うものとする。
(各レグを合計した距離が270k?@(自家用操縦士)又は540km(事業用操縦士)以上あれぱよい)
(2)「2回以上の生地着陸」とされている場合には、中間における少なくとも2回の生地着陸については、異なる地点において行うものとする。
(3)飛行距離は、実際に飛行した経路に沿った距離ではなく、出発地点と目的地点(生地着陸地点を含む〕を直線で結んだ距離で算出する。
(4)日常、離着陸基地として使用している飛行場以外の飛行場へのフルストップによる着陸を生地着陸という。
とあります。
これで日本の免許書き換えにあたり、根拠通達も確認出来ましたので安心してグアムでクロスカントリー飛行を訓練出来ることも確認できました。
さてさて、今日はここまで。