今日は夜間飛行について投稿しようと思います。
夜にフライトすると聞いた時、確かに夜でも飛行機やヘリコプターは飛んでいるけど、はたして小型機は有視界飛行というものができるの?だって真っ暗なんでしょう?という疑問を持っていたのですが、実際訓練してみて夜でも全然よく見えるということが分かりました。昼でも夜でも有視界飛行は可能なのです。
実施にはこんな感じです。とはいえ日暮れからそんなに時間がたっていないので山の稜線までなんとなく見える状況です。
しかしこの日は新月だったので20分たつとこんな感じに真っ暗です。
夜の空港なんかは灯火が綺麗です。しかして空では?他の航空機が近づいてくるのをどう探すのか?レーダーなんてたいそうな代物は小型機にはついていませんし。答えはPosition Lightsです。
航空機にはLeft側にRed、Right側にGreen、Tail側にWhiteのPosition Lightsがついています。また航空機衝突防止灯(Anti-Collision Lights)というものもついています。例としてはMD90が日本引退の時の写真をあげると、左右の翼端についているのがPosition-Lightsです。
飛行している機体を正面から見るとこう見えます。
腹のあたりでかすかに赤くピカッと光っているのはAnti-Collision Lightsです。もっと寄せて見てみましょう。
ちょうど上下のAnti-Collision Lightsが点灯した瞬間です。地上で見るとめちゃくちゃ強い光です。
FARのセクション91の209では夜間飛行は日没から日の出までの期間を指し、この間飛行する場合はPosition LightsとAnti-Collision Lightsを点灯させなければならないとあります。
ライトは計器盤の下の方についていたり、機種によってさまざまです。写真はC-172P、現在訓練している機体です。中央の白い鍵盤みたいな所が主にLights系です。余談ですが左の白いマルはご家庭のブレーカーと同じで、電気機器に異常があると飛び出して知らせてくれる「サーキットブレーカー」といいます。また、左の赤い鍵盤2つはMaster Switchです。右側の黒い取手がついたのがスロットル、赤いものはMixtureといってエンジンの中で空気と燃料を混ぜる比率を調節するノブです。その右が電動フラップのレバーです。脚元にあるのがラダーペダル、その右についているコブのついたハンドルがトリムタブ、その右の三角の器具はヘッドセットが使えなくても無線が発信できるようについている手で押して無線送信するためのマイクロフォンです。
では小型機は実際にどう見えるのか?初めて夜間飛行した時、正確にはまだトワイライトぐらいなのですが。
めったにいないと言われていたトラフィックと重なったことがあります。トラフィックパターンのDown windに入った時、不意に無線が入り、辺りを探しても見えません。しかしじっと11時方向あたりに何か飛んでいるなと思い目をこらすと、Long-FinalへApproachしてくる機体をようやく発見してSeparationを取りながら見ていました。遭遇した時の動画を下記にご紹介します。よくよく見てるとだんだんストロボが見えてきます。しかも着陸した後、滑走路からなかなか出てくれず、なんと1200mある滑走路全部使い切ってからタキシ―ウェイに出られたので初めての夜間飛行着陸で緊張していたのにのにしょっぱなからなんとGo Aroundすることになった思い出深い一瞬です。
また、Non-Tower空港などでは場所によってはパイロットが自分で灯りをつけられる空港があります。この装置のことをPCL(Pilot-Controlled Lighting)といいます。訓練空港についていたので、利用したことがあります。教官いわく、最終進入のTurning Final中に光らせると綺麗だよということで、実際こんな感じでした。
なんでいつも点いてないのか?だって電気代もったいないじゃないですか笑
アメリカにあまたあるNon-Tower空港が全部ついていたら、もう電気代がすごいことになります笑
必要な時に使うということですね。
だのでNon-Tower空港でつけてるところがあり、そういった所にはいつでも利用して降りられるのです。灯りのつけ方は簡単です。
無線とPCLは連動しているので、パイロットが無線送信スイッチをチッチッチと連続して既定の回数押すと光ったり、消したりできます。
7回押すとHIRLとREILが付いていれば光ります。
5回押すとMIRLがついていれば光り、REILだけなら逆にREILが消えます。
3回押すとLIRLがついていれば光り、REILは消えます。
※HIRL,REIL,MIRL,LIRLはまた今度投稿してご紹介します。
そして数分すると全部消えます。まさに節電ですね笑
また、空港にはAirport Beacons(飛行場灯台)というものが付いているところがあります。夜間パイロットには「ここはどこぞの所属の空港ですよ」と色の違いで教えてくれます。クルクル回っているものから、Flashingしているものまで。様々です。チャート(航空図)で空港を見ると星形のマークが書いてあるので飛行場灯台を運用している空港かすぐ分かります。
この灯台の明かりはかなり遠くからでも見える協力なものです。種類としては
1 民間空港(Civil Land Airports)が緑と白
2 軍用空港(Military Land Airports)が2回の素早い白色点灯とその間に緑色の点灯
3 水上空港(Lighted Water Airports)が白と黄色
4 ヘリポート(Lighted Heliports)が緑と白と黄色の3色
となります。なおこのAirport Beaconは日中に例えば空域Class B,C,D,Eの空港では地上視程が3Statute Mileを切るかCeilingが1000フィートを切る状態。つまり有視界飛行方式で飛べない状態になると日中でも光ります。なのでその空港にVFR(有視界飛行方式)で飛んで行って飛行場灯台が光っていたら、着陸できません。ただ間違えてはいけないのはClass B,C,D,Eの空域だけなので。昔はEの空域空港だったところの飛行場がClass Gに変更されて、確かに天気が悪いけど日中光っていたらそれはIMC(計器飛行気象状態)を示すとは限りません。というか意味が無く光っている場合があるので事前に確認が必要になります。ASOSなどのロボット気象観測装置が付いていれば気象状態を確認しないと行けないのです。燃料が少ない時なんかは特に。
で、民間空港はどんな風に見えるかというと。こう見えます。
まず緑と白なので
緑はこう
次に白はこう見えます。
ただし、夜間飛行には昼間飛行とは違った危険性や注意点があります。例えば空間識失調(Spatial disorientation)というものがあります。
これは夜間に自分が水平に飛んでいるのか、傾いているのか、さかさまなのか、上を向いて飛んでいるのか、下を向いて飛んでいるのか分からなくなるものです。
例えば町明かりを頼りに飛んでしまうと、ふと山の尾根にも町明かりがあったり、快晴で満点の星空だったりする状況で飛んでいたとします。たとえ水平飛行していても、町の明かりに頼って飛行していてふと見張りの為に周りを見渡したとしましょう。星明かりと町明かりが同じように見えはじめたとしたら?その混乱が空間識失調です。別の例では雲中飛行をしている時です。上下左右の方向感覚は外の景色だけ見ていれば当然分からなくなってきます。例え加速度や傾いている感じを頼りにしても、人間の感覚というものはそうそう正確ではありません。誤認するのです。
こんな感じ
そうならない為、パイロットは計器だけを見て飛行する訓練を必ず受けます。先日の投稿に記述すたAirman Certificate StandardsのTaskにもありますが「Basic Instrument Maneuvers」、基本計器飛行の練習です。
これには外界の景色が見えないフードを被って、計器だけを見て飛行する訓練が行われ、その間の見張りは教官が行います。教官は指定の高度、速度、針路、バンクを指示して訓練生に計器だけを見て飛行する訓練を施すのです。
他にも色々紹介したいのですが、今日はここまで。
次回は夜間飛行Part2 について投稿したいと思います。