フライトスクール・クラブの訪問や資料請求、アメリカと日本のログブック書き方の違い
2016/12/06
日本から一番近いアメリカといえばグアムですね。成田空港から3時間半でつく近さ、日本人にとって利用しやすい現地環境。そしてもちろんここにもフライト出来る環境はあるのです。前々から興味をもって調べてはいたけれども、どうにもインターネットや雑誌の情報だけでは近くて便利!フライト代も日本より安い!利便性がいい!日本人も多く治安も良い!と良いことばかり書いてあるのですが、他国のことなので、納得して通える環境にあるのか気になりました。いざ通うとなればかかる学費は人生で1、2を争う高額な出費になります。とはいえ渡航して調べるまで時間やお金、手間を掛ける程なのか?と躊躇していました。ただ実際に見てみないと分からないことがあるのは国内のフライトスクールやクラブを回って明白でした。
訓練費の見積もりから見ると、各社の差は結構あったからです。見積もりの中にはお話しを聞きに行くと見積もり以外の雑費がかかるところが結構あるのです。国内自家用陸上単発固定翼、1時間(教官同乗費込)あたりのレンタル料で見ると
1 38,000円
2 41,000円
3 54,000円
3 56,000円
4 58,000円
(平成25年~平成27年調べ)
※もちろん相場により、サーチャージがかかる場合があります。
※デュアル(教官同乗)からソロ(単独飛行)に出れば教官同乗費はつかなくなりますので、1時間のレンタル料は少し安くなります。でも航空保険はしっかり掛けないと。
これだけの差があるのには、使用する機体のグレードや利用する空港、施設維持管理費などが関係してくるので一概に比べられません。見るべきは総額と内訳です。内訳が見積もりにのっていない場合がよくあるので注意してください。また、海外だとアメリカFAAのPrivate Pilot License (Single Engine Land)がこれに相当し、向こうで日本の航空法上求められる飛行経歴を満たせば、日本で学科試験の法規のみ受験して合格してから航空局に申請することで日本の免許に書き換えることが可能です。せっかくなら日本より費用の安いアメリカで取得して、帰国してから書き換えて日本で使えるようにしたいという方がほとんどだと思います。
日本の航空法では自家用操縦士について以下の定義があります。
・航空機に乗り組んで、報酬を受けないで、無償の運行を行う航空機の操縦を行うこと。
また、パイロットになる試験を受けるまでに以下の飛行経歴が必要になります。
・17歳以上であること
・総飛行時間40時間以上
・10時間以上の単独飛行
・出発地点から270㎞以上の飛行で、中間において2回以上の生地着陸をするものを含む5時間以上の単独操縦による野外飛行
・夜間における離陸、着陸及び航法の実施を含む20時間以上の同乗教育飛行
その他についても国土交通省のサイトで詳しく紹介されています。この要件を訓練中に満たしていることが日本の免許に書き換えられる条件となります。それを踏まえた上でアメリカFAAの方を見ると2016年9月15日付のe-CFRでは下記のようになっています。
§61.109 Aeronautical experience.
(a) For an airplane single-engine rating. Except as provided in paragraph (k) of this section, a person who applies for a private pilot certificate with an airplane category and single-engine class rating must log at least 40 hours of flight time that includes at least 20 hours of flight training from an authorized instructor and 10 hours of solo flight training in the areas of operation listed in §61.107(b)(1) of this part, and the training must include at least—
(1) 3 hours of cross-country flight training in a single-engine airplane;
(2) Except as provided in §61.110 of this part, 3 hours of night flight training in a single-engine airplane that includes—
(i) One cross-country flight of over 100 nautical miles total distance; and
(ii) 10 takeoffs and 10 landings to a full stop (with each landing involving a flight in the traffic pattern) at an airport.
(3) 3 hours of flight training in a single-engine airplane on the control and maneuvering of an airplane solely by reference to instruments, including straight and level flight, constant airspeed climbs and descents, turns to a heading, recovery from unusual flight attitudes, radio communications, and the use of navigation systems/facilities and radar services appropriate to instrument flight;
(4) 3 hours of flight training with an authorized instructor in a single-engine airplane in preparation for the practical test, which must have been performed within the preceding 2 calendar months from the month of the test; and
(5) 10 hours of solo flight time in a single-engine airplane, consisting of at least—
(i) 5 hours of solo cross-country time;
(ii) One solo cross country flight of 150 nautical miles total distance, with full-stop landings at three points, and one segment of the flight consisting of a straight-line distance of more than 50 nautical miles between the takeoff and landing locations; and
(iii) Three takeoffs and three landings to a full stop (with each landing involving a flight in the traffic pattern) at an airport with an operating control tower.
以上のようになっており、日本と同じ点もありますね。最低限40時間フライト。うちDualで20時間、3時間のCross country、3時間の夜間飛行、1回のCross countryは100NM(マイル)超える総距離であること、Airportで離陸10回・着陸10回(それぞれの着陸はトラフィックパターンでの飛行含む)のフルストップ、3時間の計器飛行かつマニューバー色々と航法装置や施設・レーダーサービスを適切な計器飛行、テストの月から2か月前までにプラクティカルテストに向けた準備のため単発飛行機の承認されたインストラクターと3時間のフライト、Soloで10時間と最低限5時間のソロクロスカントリー、それに1回のソロクロスカントリーの総距離は150NM(マイル)、かつ3か所でのフルストップ着陸、また(ソロクロスカントリーするなら)直線距離で50NM(マイル)離陸地と着陸地が離れていること。管制塔が運用されている空港での3回離陸と3回着陸を含んだフルストップ(それぞれの着陸はトラフィックパターンでの飛行を含む)と条件が細かいですが、上記を満たしてかつ日本の要件も満たせば書き換えが可能です。
ここで1つ問題があります。日本とアメリカでは野外飛行のログブックへの記載方法が違うのです。日本人のインストラクターならまだしもアメリカのインストラクターから教わる場合など特に気を付けなければなりません。
もしここでアメリカ式に書いて、ライセンスを取り終わってから日本の航空局に持ち込んでも、この書き方ではダメですとなる可能性があります。これは渡米前に書き方をしっかり確認して、自分でログブックを書くかインストラクターに説明するしかありません。ログブックを修正する際は必ずインストラクターのEndorsement(署名)が必要になりますので、ともすれば訓練終了後に国際郵便でインストラクターにログブックを送り修正署名をもらい返送してもらわなければならないという大事になる可能性もあります。
という訳で様々な注意点がありますが、では実際皆さんいくらで飛んでいるの?ということになります。これは日本で代理店や仲介の入った、いわゆる日本とつながりがある海外フライトスクール・クラブではPPL(SEL)での1時間あたりのAircraft Rental Feeで見るとこのようになります。
1 Cessna 152 $95/Hour + Instructor Rate $60/Hour =$155/Hour
2 Cessna 172 $140/Hour + Instructor Rate $40/Hour =$180/Hour
3 Cessna 172 $165/Hour + Instructor Rate $40/Hour = $205/Hour
4 Cessna 172 $150/Hour + Instructor Rate $55/Hour = $205/Hour
5 Cessna 172 $144/Hour + Instructor Rate $55/Hour = $199/Hour
6 Diamond DA20 $127/Hour + Instruction Fee $55/Hour = $182/Hour
7と8は代理店などが入っていない、自社直営のスクールです。
7 Piper PA38 $100/Hour + Instruction Fee $50/Hour = $150/Hour
8 Piper PA28 $115/Hour+Instruction Fee $50/Hour = $165/Hour
(平成25年~平成27年調べ)
※もちろん相場により、サーチャージがかかる場合があります。
現地の人、つまりローカル向けのフライトスクールやクラブだと値段が更に下がる場合があります。電話して聞いた時にうちは$55/Hourだよと学科の金額と聞き間違えたんじゃないかということがありました。英語が出来ないと通えないでしょう。海外からの航空留学生を積極的に受け入れている学校ならまだしもですが。Cessna 152の訓練だと、単価が少し安くなるようです。ただし152は教官とお尻がくっつく程狭いです。いや冗談じゃなくて。それと小さい機体なので訓練生や教官の体重によってはWeight and BalanceがOverで飛行訓練に使えないなんてことも起きるようです。ただしかなり素直な機体というか、ヒラヒラ動くというか、扱いやすい機体との評判です。
この他にも学科(座学)費用が大体30時間~50時間で$40~$55/Hour、おおよそ$1200~2750程度(個人の進捗によりますし、追加の座学をお願いすれば変動します)掛かる計算です。その時々のレートや原油価格、燃油サーチャージの負担や大きな空港ではAirport Fee(空港使用料)が1フライトに掛かります。よって金額は変動するので最新の情報を確認しておくと良いでしょう。そしてやはり海外で訓練をする場合は滞在費の問題があります。寮があるところならある程度生活に必要な備品やお店、場所によっては車を共用使用している所もあります。個室か共用かによって$40/dayぐらいまでの費用で使える所もあるようです。それ以外にホテル滞在から直接交通機関を使って通学するとなかなかの費用が掛かります。$50/dayで訓練日数60日と見込むだけでも$3000と食費等が掛かる計算です。レンタカーを借りようもんなら跳ね上がります。
そしてもう1つの懸案事項が現地で飛べる頻度です。せっかく渡米して何日も飛べない日が続けば時間もお金も無駄になります。特に会社員をしながら分割渡米をしようと考えている方はこの点要注意です。現地で飛行しやすい時期はいつか。生徒が多すぎて順番待ちになる可能性は無いのか。機体数が少なくて、いざ訓練しようと思ったら不具合発生で整備待ち、はては壊れた部品のストックが無かったから届くまで点検整備になって乗れなくなるなんてことが結構ざらだそうです。この辺りは経験者からの伝聞もあるので、実際に体験してみないと分からない所がありますが、それでも会社員の有給1日はとてもとても貴重な1日なのです。可能な限りそんなことが無いようにしたい。訓練地の年間降雨量や雨季がいつ来るのか調べておくと非常に参考になります。
・(見込みの飛行時間)+(その他にかかる費用)+α(自分の技量分による見込み時間外のフライト代)+(生活費・通学費)+(学科・実技試験代)
上記5つが国内・海外共通して掛かるものです。では見込みの飛行時間とはいくらで計算されているものかというところですが。航空法上最低限必要な時間+αとなり、この+αの飛行時間はスクールの設定によって違います。それでも大体50時間~65時間で計算されています。50時間を切るのは自衛隊などの経験者で無いと難しいのではと思います。というか普通に無理です。なのでお財布的に安全マージンを取って計算することを強くお勧めします。自分は70時間と80時間で計算しました。また、飛行場の場所によっては訓練出来る空域まで距離がある空港があります。この空域までの移動時間は完全に負担になります。出来ることなら少ないに越したことは無いでしょう。あと滞在先の治安状況です。1時期サンディエゴのフライトスクールに問い合わせを入れたことがありました。滞在先の有無について聞いたところ近くにモーテルがあると教えていただいたので、その時になってはじめて「あれ?治安的に大丈夫?」という疑問がよぎりました。メキシコとの国境に近いこの町のことを検索すると治安関係のニュースが良くヒットしたのです。
そしてもう1つ、大事なことがあります。
航空保険の加入状況です。これは非常に神経を使った問題でした。1度事故が起きればそれ即ち自分や他の人の死亡あるいは怪我につながり、さらに乗るのは飛行機でかつアメリカです。もし下手なところに落ちて損害賠償になれば日本の賠償額の比ではありません。裁判大国アメリカでの飛行訓練を自費で行うのであれば、これは人任せにしてはいけません。スクールの加入状況と保険金も教えて下さる所はありましたが、時々猜疑心を持たれました。なぜか分かるのは渡米した後のことでしたが保険金詐欺の可能性があるからです。それでも自分が亡くなってしまったら家族や相手への誠意はその保険だけとなります。カバーされる額が大きければ大きい程安心です。また、カバー額や条件は非常に細かく見ておくべきです。参考までにAOPA Renter’s Insuranceで紹介されている小型飛行機が壊れた時、その部品は幾らするのかというリストを紹介します。
※あくまでも参考例ですがこれだけのReplace費用がかかります。$50000の保険金額だとしても心もとない。
スクールの保険の内訳も確認し、かつアメリカの保険を2重にかけておくと安心かもしれません。なぜ日本の保険を掛けないのかと言うと、普通の海外旅行者保険は航空機への搭乗かつ飛行訓練は危険な運動またはスポーツとして扱われ、適用除外または割り増し特約の対象となるからです。そして割り増し特約をつけたとしても死亡・怪我・後遺障害は対象になりますが、航空機の損害賠償を取り扱う会社はゼロです。アメリカのフライトスクールでは場所により法律で保険に加入することが義務付けられていますが、保険会社はフライトやメンテナンス状況を定期的に確認し、事故の際に適切な保険金を扱えるようにしているのです。それだけ飛行機の事故というのは重大な結果を生むからです。すると必然的にアメリカの保険に入る必要性が増す訳ですが、残念なことにアメリカに住所が無い人は加入出来ないところがほとんどです。あとは渡航日数に制限はつきますがAvemcoやPatriot AmericaのAdventure Sport Insuranceなどをよく読んで加入するかです。日本では航空機操縦特約付きの保険で死亡・怪我・病気・後遺障害などの海外旅行保険なら入れます。ただし高いです。5日間で見積もりを取ったら2万5千円と5万円の見積もり案が届きました。つまり60日なら150万円か300万円です。それでは安い場所へ訓練に行く意味が薄れてしまいます。ここまで調べてようやく選ぶべきスクールの基準が見えてきました。
1 手が届く料金か
2 分割渡米は可能か
3 宿泊先は手が届く料金かつ周りの利便性はどうか
4 日本人インストラクターはいるか
5 機体数は単機ではないか
6 空域は難しいところでは無いか(いずれ書こうと思いますが、Class B(ブラヴォー)という空域を持つ空港があると、色々と大変なのです)
7 訓練空域は近いか
8 連絡がまめに取れるか
7についてはチャート(航空図)を読めないとどこに訓練空域があるのか分からないので、現地のスクールに聞くか勉強して読み方を覚えるかです。私は仕事で日本のチャートを使っていたので、アメリカのものも読むことが出来ました。
だけど見た瞬間驚きでした。
「なにこれ?いたるところに空港や飛行場、どころかSea Plane空港まであるじゃん笑」
めちゃくちゃ多いのです、そして大きな空港や軍用基地などの周囲は空域がとても複雑に絡み合っていました。
参考までにこちらのサイト「Sky Vector」でチャートを見ていただくと分かると思います。ここは無料で世界中のチャートが見れるサイトです。近いところだと、飛行場の3NM隣に飛行場があるので、アメリカではたまに着陸すべき空港を間違えて隣の空港に降りていたなんて事案が結構あります笑 軍基地だと洒落になりませんが。
これに追加の条件として、訓練を行いたい機体について今後をよく考えて選択するべきです。なぜならアメリカでしか飛んでいない機種で飛ぶよりも日本でも飛んでいる同じ機種または同じような操縦系統で行う方が慣れているからです。操縦桿がスティックとコントロールホイールで違ったり、低翼機と高翼機では給油方法や飛行前点検の方法も違いますスロットルもレバーアームタイプかプッシュプルロッドタイプかで大分違います。
次の投稿ではFAAの学科試験とグアム見学について投稿しようと思います。