座学 無線航法

無線航法Part3 -VOR受信機のOBSとコースの決め方-

今日は先日投稿した無線航法Part2 ーVOR受信機の使い方についてーの最後に紹介しようとしたOBSについて投稿したいと思います。

VOR受信機についているダイアル、これがOBS(Omni Bearing Selector)です。VORから出ている電波を拾う時、どの電波を拾うかをこのダイアルでセットするためのものです。なのでCourse selectorとも言います。無線航法Part1でも軽く紹介していたVORですがこれも360度全周に電波を発しています。NDBと同じく四方八方に無指向性電波をばらまいているかというとそうではありません。大きく違うポイントはVORは1度ずつ、1度ずつ、位相の違う電波を発信し続けています。

電波が違う?なんのこっちゃ?と疑問に思っていたのですが「事前に用意出来るものから」で紹介した航空無線通信士の無線工学のテキストを読んでいると、なるほど原理が判明しました。

違う電波を流すためには、違っていることが分かるために基準になる電波がいります。

じゃあ電波で違いをつけられるのは電波の位相しかないです。さて、どうやって違いをつけて航空機に知らせるべきか。

あ、電波なんだから基準になる位相とちょっと味付けした位相を混ぜた電波発射して違いを見せつけてやればいいじゃん!

同時に発射できるアンテナ装置を0度(360度)から順に1度、2度、3度、4度、5度、・・・と1度1度作ってその方位に・・・と思ったら幾つかまとめられるので48機のアンテナと、中央に基準位相が発信できるアンテナ立てよう。これで違う位相の電波が同時に打てる!

360度に1度1度角度をつけて電波を発射することができるVOR無線航法施設の完成です。国交省のサイトではこのような施設写真が紹介されていますが、なるほどミステリーサークルにしか見えません笑

上から見たら良く分かるのでしょうが、真ん中の赤い棒が基準位相を発信するキャリアアンテナ。周りは可変位相を発信するサイドバンドアンテナです。

vor

<参照元:国土交通省 航空保安無線施設等 VOR/DME等配置図 >

これらのVOR無線標識を目印に飛んでいけば目的地まで航法に利用することが出来るのです。日本ではこれだけの場所にVORやDME、TACAN、VOR/DMEやVORTACが配置されています。

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<参照元:国土交通省 航空保安無線施設等 VOR/DME等配置図 >

基準位相と可変位相の電波を混ぜ合わせた電波を発射し、航空機のVOR受信機が電波を拾います。アンテナ、受信機、指示器、コントロールパネルで構成されたダブルスーパーヘテロダイン式のVOR受信機の中で基準位相と可変位相の差を測りつつ、音声信号を復調します。

※スーパーヘテロダイン

例えるならパン屋さんが小麦粉やらなんやらからパンを作るように、PDFを開くにはAdobe readerがいるように、チャーハンを作るにはそれなりの鍋がいるように、拾った電波を中間周波数という素材に綺麗に整えてから味付けして元のデータ、つまり方位角と音声信号のデータに戻す機械の構成式がスーパーヘテロダイン式で、ダブルというのはより複雑な装置にすることで精度をあげた構成式のことです。拾った電波はそのままじゃ使えないのでこの仕組みで使えるデータに変換してやらないといけません。すっごく漠然とした説明なので詳しく知りたい方は調べていただいて笑

音声信号について、VOR無線施設は音声信号も発信しています。なので周波数を合わせるとその施設に割り振られたモールス信号が聞こえてくるので使用している周波数が正確か確認できるのです。航空図(チャート)にモールス信号の符号は割り振られているので、すぐに見分けることが出来ます。

グアムではNIMITZ(ニミッツ) VOR1つしかありませんのですぐに分かります。そして右下の点と線で描かれた符号が周波数を合わせると聞こえてくるモールス符号です。トン、トン、ツー、ツー、トン、ツー、ツー、トン、トンですかね。まだ聞いたことがありません。

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また、アメリカではこのVORの表記窓にHの符号がついているとHIWAS(Hazardous In-flight Weather Advisory Services=ハイワス)という危険な気象状態が発生していることを自動音声で聴けるVORであることを示しています。なのでVORのボリュームを上げると、モールス信号と、たまにハイワスが入っていることがあるそうですが、まだ自分は遭遇した機会はありません。カリフォルニアに行った時近くのサリナス空港VORについていました。

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話が逸れましたが、電波から信号を復調するとき

お!この味付けは127度だ!コックピットのVOR受信機に127度受信してるというデータを送ろう!とVOR受信機の機械が判断します。

で、127度に変換されたチャーハ・・・いえいえデータがVOR受信機に反映されます。

濃い味付けか薄い味付けか舌が敏感に判断するように、VOR受信機も30Hz電波における位相差を航空機側の位相差計で測定して方位角を出しているのです。

そしてようやく本題に戻りますが、OBSはVORのどの方位角電波を拾うかを指定できます。

つまり、VORの電波が届く範囲を飛行していて使うための周波数を知っていれば、OBSにセットしてそのVORへ行くことができます。

ではどうするの?というと言葉で説明するのがへたくそなので、

無線航法Part2」で紹介したAviation Training Tools Interactive Training AidsさんのサイトのVORシミュレータで参考例を見てみましょう。

主に見るのは、飛行機がVORからある位置にいる時に、どうやったらVORに行くことが出来るのかです。まず

 

1 VOR受信機の周波数を近くのVORの使用周波数にあわせる。この場合はROCKVILLEの112.5です。下段パネルのNAV側を合わせました。最上段が機体の向きを教えてくれるDG(Directional Gyro=定針儀)で、その下がVOR受信機です。今は機体が真北へ向けて飛行していることを示しています。

2 使用周波数にあわせたことでVOR受信機が動きはじめます。CDI(VOR計器の、この図の場合は左側にある白い棒)の動いた方向とTo/From Indicatorのどちらに白い三角形がついているかで、VORが自分の位置からどの方向にあるかを確認する。この場合は左斜め前方、つまり真北へ飛行している機体の北西方向にVORがあるということになります。To側に白い三角形が付いているので、VORのある方向へは機首は向いていませんがVORのある場所の方へ飛んで行っているのが分かります。

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3 OBSのダイアルを回してCDIが真ん中にくるようにクルクル回す。違いが分かるように少しづつ回してみましょう。まず真北(360度)向いていたので45度ほどOBSのダイアルを回すと、このようになります。お!CDIの針が少し右にずれてきました。

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CDIを中心まで戻るようにOBSを回し続けます。310度まで来ました。あとちょっとです。

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ここでVOR受信機の中央に、左右にそれぞれ5つの白いドットが打たれていますが、なんのためのドットかというとコースに乗る直前の旋回の加減を決める目印として使います。

これは1つのドットの間が方位角で2度違うことを示しています。つまり1つのドットの間が2度×5つで、左右それぞれ10度までの方位角の目印となっています。

主にVORへの針路を取る時、CDIの針がコースにのったかを教えてくれますが旋回しているとどのあたりで真ん中になるかの目安が無いと、旋回を戻す時通り過ぎてしまうかもしれません。なので方位角2度の目印を見ながら、近づいてきたら旋回の加減を緩めていけば、コースに乗ったと同時に水平直線飛行に入れます。追い越して無駄な旋回をしなくて済みます。

4 CDIの針が真ん中に来ました。OBSは308度を示しています。ここから308度方向へ飛べばROCKVILLE VORへ向かうことが出来ます。

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ここで位置関係を確認するために、上段のツールバーのNavigation ViewからRequested LOPを選択すると、機体との位置関係がより分かりやすくなります。

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5 たとえ真ん中に合わせても、VORに向いて飛行していなければ当然あれよあれよとCDIはOBSで指定したVORへのコース308度線からずれます。北へ飛行しているのならVORがどんどん左側に、つまりCDIの針も左側方向にずれていってしまいます。こんな風に

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6 CDIが真ん中から動かないように機体をVORの方向に向ける必要があります。なのでHeading 308°を取ります。このシミュレータではVOR受信機の上段に配置されたDGの左下のダイアルを回せば赤く表示されている飛行機の向きが変わります。

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7 真ん中からCDIが動かなくなってTo/From IndicatorがTo側に白い三角形が出ていればVORへ向けて飛行していることが確認できます。

これで行きたいVORへ行けます。グリーンのラインがVORへ向かっているTOのコース、ブルーのラインがVORから遠ざかっているFROMのコースを示していますが、VORの直上を通り過ぎるとVOR受信機のTo/From Indicatorが反転して白い三角形がFR側につくようになります。

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という感じでVORを無線航法に利用している訳ですが、ここで仮にDME(Distance Measuring Equipment)が一緒についていれば、自分の機体がVORからRadial(ラジアル)で何度に位置の、VORから何マイルにいるかが一発で分かる訳です。

またVOR受信機が2つ機体についていればおおよその機体の位置をVORとVORの交点から知ることが出来ます。

無線航法は最近ではGPSが多くなってきた感もありますが、まだまだVORは主力です。VORの無線施設の付近ではたくさんの航空機が目印にするため結構混み合います。高速道路のサービスエリアや、道の駅みたいなものですね。なので近づく時は要注意です。

あとこれは会社の同僚から聞いたのですが、VOR1つでも三角関数の式を利用して、自分の位置を知ることが出来るそうです。このあたりはいずれ研究しつつ紹介していきたいと思います。もし他の計器が壊れて、VORだけ生きてた時などは非常に重要になると思われるので。使えそうなものはなんでも吸収するようにしていくつもりです。

長くなりましたがVORによる無線航法について紹介してきました。

次回は航法計算盤について紹介したいと思います。

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